美は存在しない

岡潔「春宵十話」を読了。

美が実在するというのはうそで、本当は美などはないのです。
情緒があって美が外に出るのであって、外に美があって情緒で受けるのではないということです。
岡潔「春宵十話」より)

美とは万物に宿っている、ただ隠蔽されていて、それを発見できるかどうかなのだ、そう考える時期があった。だからか、赤瀬川原平超芸術トマソンが自分に食い込んだし、マルセル・デュシャンという二十世紀の偉大な芸術家に改めて惹かれたりもした。それを上記の一文が反転させ消化を促してくれたように思う。美は万物に宿ってなどいない、私の中にある唯一の美が放出され、万物に宿る可能性だけがあるのか。そう考えると妙にしっくりくるような。ならばと、今、目の前にあるのただのガラスのコップに美が宿る可能性はるのか検討してみるのだが、美しいとは思えそうもない。ただのガラスのコップだ。今のところ。むむむっ、悩ましい。

春宵十話 随筆集/数学者が綴る人生1 (光文社文庫)

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